これまでのワークショップ

第1回〜第5回


■第1回テーマ 『カノンの再発見! 最強の教材を見直そう』

 

第1回は、教育音楽という理念を確立し、その普及に尽力された岡本敏明氏の生誕100周年を記念し、本学会会長の岡本 仁氏を講師に迎え、『カノンの再発見! 最強の教材を見直そう』をテーマに2007年3月17日(土)・18日(日)の二日間開催しました。

 

第2回は、1回に引き続き『カノンの再発見! 最強の教材を見直そうⅡ』をテーマに、1回めで実習した「音感」「指揮法」をさら深め、より実践的なワークショップとなりました。

2007年9月1日(土)・2日(日)の二日間開催しました。

 

ワークショップのスローガンは「音感と指揮法」。

 

「音感」は、聴覚の訓練、音を聴いて名前を言わせ「当った・はずれた」などという陳腐なもので無く、講師が自らいろいろな先生に指導を受けたなかで疑問に思った事、納得した事を整理整頓・集大成し、実践的に学びました。

 

まず、倍音の発見、純正調の体験を手始めに「耳が開かれる事は心が開かれる事」を受講生一人ひとりが体験することから始まりました。

 

「指揮法」は、昨今はやりの “かっこいい棒さばき” を徹底的に排除し、指揮する事とは指導する事、という最も本質的なポリシーの上に、楽曲分析・音楽史・ニュアンス法・フレーズ法・話法・心理学・選曲法・プログラム構成法その他を 多角的、分析的、総合的に全く新しい視点から研究しました。

 

テキストとして「カノン」を取り上げ、同度のカノン(いわゆる輪唱)から4度のカノン、5度の……等と、やがてフーガにつながるポリフォニーの音楽を中心に歌唱実習。その後、課題の発表実習として全員が受講生に対し指導実習を行いました。

 

■第1回終了にあたって会長メッセージ

 

ワークショップにご参加いただきありがとうございました。

 

中身が多かったのでさぞかしお疲れのことと存じます。でも、いいカノンが沢山生まれました。すべてあなたの中から生まれた貴重な芸術作品です。

 

まだほんの入り口なので十分なご満足がいただけなかったことと思っております。音感のコーナーで申し上げたように、あと2、3回体験していただくといろいろな事が見えて来るはずです。

 

次回もきっとお目にかかってご一緒に勉強いたしましょう。それまでどうかお元気でお過ごし下さい。

会長 岡本 仁

 

…………

 

■第2回テーマ 『カノンの再発見! 最強の教材を見直そうⅡ』

 

第2回は、『音感と指揮法を掘り下げる!』をスローガンに開催しました。

 

【第2回ワークショップ報告】

 

テーマ その1 「音感」 

第1回を受講された方には、倍音の発見、純正調の響きの体験をさらに掘り下げ、さらに指導法を身に付けるための実習を行いました。

初めて受講された方には、倍音の発見、純正調の体験を手始めに「耳が開かれる事は心が開かれる事」を体験しました。

 

テーマ その2 「指揮法」

第1回と同様、指揮する事とは指導する事、という最も本質的なポリシーの上に、楽曲分析・音楽史・ニュアンス法・フレーズ法・話法・心理学・選曲法・プログラム構成法その他を 多角的、分析的、総合的に全く新しい視点から研究・実践しました。

 

今回もそれら研究のためのテキストとして「カノン」を取り上げ、同度のカノン(いわゆる輪唱)から4度のカノン、5度の……等と、やがてフーガにつながるポリフォニーの音楽を中心に歌いながら実習しました。最後に代表的な作品の演奏実習としてヴィヴァルディ作曲の『Gloria』から'Quoniam'と'Cum Sancto Spiritu'をレッスン、演奏、録音しました。

 

これは日本の教材のほとんどがホモフォニーに偏る結果、詞を節にのせてといういわば情緒的なもののみを音楽と規定するかの悪弊を改めて、知性と感情のバランスのとれた人間形成に資するための音楽享受に気付かせるためのものです。

 

■会長メッセージ 「第2回終了にあたって」

 

2日間、暑い中ご熱心に勉強して下さるお姿に感激し、感謝致しております。

 

※「音感」とは単に倍音を聞きとることのできる聴覚の発達訓練にとどまらず、音楽のいちばん深い本質を感じ取る事のできるちから、即ち「音楽における審美眼の養成」でありますから日に日に鋭くなるご自身の聴覚とそれに伴う音楽享受の「より深い・高い」境地の獲得をたのしみに日々自学自習なさった上で次回のWSにおいでくださいますよう楽しみにお待ち申し上げております。

 

※「カノン」は講演で申し上げたように、垂直感覚だけでなく「水平的な思考能力」の獲得こそが「抜きん出た音楽センス」の持ち主になることだ、という確信をお持ちいただき、さらに巧まざるユーモアとハイセンスな指導力の持ち主になって頂くための大切な「登山道」とお考えくださってご精進くださいますようお祈り致します。

 

ただたんに人前で自作の歌詞を全員で輪唱してもらう宿題のように見える「あの」2日目朝の身のこなしこそが「指揮法の本質」とご理解ください。

 

それでは次回を楽しみに BONA NOX !!

会長 岡本 仁

 

…………

 

■第3回テーマ 『美しい音、理想のハーモニーとは』

 

第3回は、2008年3月29日(土)・30日(日)の2日間、武蔵野大学グリーンホールにて開催しました。

「美しい音、理想のハーモニーとは」をテーマに、1・2回で実習してきた「音感」体験から指導者としての方法論を実習を通して学びました。また、カノン、フーガの作詞実習と歌唱指導を通して指揮法の基礎を学びました。

 

とくに第1日めの基調講演「科学と実習」では、他に類のない画期的な方法で「音」を視覚的に捉え、楽音や人声を実際に聴きながら物理学的に分析し、音と音楽との違いやハモリの謎に迫りました。

 

作詞実習では、参加者一人ひとりが、ピアノとギターの伴奏で作品を発表。原曲の歌詞とメロディーのリズムを生かし、いかに新たな表現を加えるかという課題に取り組みました。

 

修了演奏は、ヘンデルのメサイアから「Hallelujah」をピアノとオルガンの伴奏でレッスン、演奏、録音しました。

 

■会長メッセージ

 

少しずつではありますが新しい参加者も増え、アマチュアとプロがちょうど良く混ざった顔ぶれになって来たように思います。プロの思い入れとアマの期待が合致していないように見えるこの国の音楽環境です。プロの空回りが先行していてはアマの要求が果たされません。そこのところを見誤らないように研究を進めたい……と言うのが当初からの願いでした。

 

もっともっと多くの音楽愛好者、音楽家、教育関係者、ジャーナリスト、行政関係者などなどが一緒になって「音楽と人間」について語り合い、研究を進める「場」として増殖して行ってもらいたいと思っています。3回めまでがスタートの成否を決める、と考えて進めて来ました。こんどは3年目までの充実を期して想を練り上げたいと思います。将来、30年を経て新しい音楽環境が実る日まで受け継いで行っていただきたいものだ、と念じています。

 

ご参加くださったおひとりおひとりにお礼を申し上げます。

会長 岡本 仁

 

…………

 

■第4回のテーマ 『音感とカノンを深めよう』

 

2008年8月30日(土)・31日(日)の二日間、武蔵野大学グリーンホールにて開催しました。

 

「基調講演・目で見る音の科学」 

前回に引き続きコンピュータを使って音を視覚的に捉え、音を構成する倍音を画面に表示し、目で確認。

さらに二つの音の位相をそれぞれ逆にし、合成することで音量が小さくなる現象を体感しました。

また、二つの音の周波数をずらすことによっておきる「音の揺れ」や、きれいな波形ほど重ねても「なじまない」ことなど、ふだんあまり視覚的に捉えることのないさまざまな音の実像に迫りました。

 

「音感」 

第1回から第3回のワークショップでは、倍音の発見に始まり、純正調の響きを体感し、分散唱・分離唱、和音唱をトレーニングしました。

第4回では、和音の種類を増やし参加者全員でピアノを囲んで実習。さらに一人ずつピアノを弾きながら指導法を実践しました。

 

「カノン」

初日は、歌唱法や指導法に加え、「カノン」を作曲するための基礎を学びました。そして翌日の宿題として参加者全員がカノンを作詞、作曲。

2日目では、各自が作った作品を一人ずつ発表。さらに修了発表会では、参加者の前で指揮・指導を実践。充実した実習となりました。

 

「指揮法」

第1回から一貫した実習として、カノンに作詞しそれを参加者同士が指導し合うことで指揮の原則(考え方)を学んできました。

第4回では、この「指導する」ことから指揮法の基礎(指揮の図形など)へとステップアップ。さらに指揮棒を使った指揮法を実習しました。

 

「修了演奏」

修了演奏は、 Ivan Erodの「Viva la Musica」、F.Schubertのミサ第2番ト長調から「Sanctus」をレッスン、演奏、録音しました。

 

■会長メッセージ

 

第4回目のワークショップが終了しました。

 気がかりだった天候もどうにかギリギリでもってくれてホッと致しました。

 会を重ねるごとに仲間も増え、音感、カノンの制作や指導法もめきめきと上達なさって私が期待していた以上の成果を納めつつある、と申せましょう。

 前回からはコンピュータも取り込んで「倍音や発音体ごとの音型や波型」を目で確かめられるようになりました。このことによって芸術と科学が支えあって確かな形で私達の心に深く刻み込まれ易くなったと思います。

 また今回は新しく指揮法にも挑戦して指導する者される者の相互理解に一歩近付いたように思います。加えて従来行って来たカノンの創作も作詞から作詞作曲の両面へと数段の発展を遂げました。

 かくして「音楽の門から芸術の森に分け入り逍遥する内に大自然の摂理に触れ、やがて天の声を聞く……」道を一歩一歩、歩むことが出来たらこれに勝る歓びはありません。次回は来年3月の末、プランを練り上げてお待ちしています。宿題頑張ってね。

会長 岡本 仁

 

…………

 

■第5回ワークショップ報告

今回は、第4回の『音感とカノンを深めよう』を継続しつつ、第3回のテーマ『美しい音、理想のハーモニー』で取り上げなかった『ヴィブラート』についてさまざまな観点から研究・実践しました。

 

「基調講演・美しい音とハーモニーの関係を科学する」 講演:会長 岡本 仁

今回は初めて参加される方も多く、まず教育音楽学会立ち上げの趣旨や本学会が掲げるテーマ「音育」についての話から始まり、第1回から第4回までのワークショップの内容とその意味についてお聞きしました。

第5回目の研究テーマは「ヴィブラート」。テーマを選んだ理由や後半の二つの特別講義で、あまり語られることのない「演奏とヴィブラート」について、直接演奏家に聞くという大胆な企画を立てたことについて触れ、教育音楽学会が単に発表や実習を行うだけの団体ではなく、音楽活動や社会生活を行う上で必要とされる知識や教養を深める「音育」を実践する場でもあるというお話をうかがいました。

最後に第3回、4回ワークショップと続けて行ってきた「音を目で見る」装置を今回も設置。実際の音をマイクロフォンで拾いながら、ヴィブラートの種類や有無による聞こえ方の違い、楽音を構成する倍音を目で確かめるといった教育音楽学会オリジナルの音声分析を実験しました。

 

[特別講義]「楽器演奏におけるヴィブラート」

講演と演奏:東京カンマーコレーゲン「ヴィブラート」は音楽演奏には欠かせない技法のひとつでありながら、その目的や方法論についてはあまり語られず、さらに器楽や声楽といった表現方法が異なるとどのように違うのかもあまりよくわかっていません。今回は、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス奏者をお招きし、ふだんお聞きすることのできない「ヴィブラート」について、それぞれの楽器を演奏するお立場から、奏法の違いや効果を演奏を交えながらお話ししていただきました。

 

[特別講義]「武蔵野大学雪頂講堂パイプオルガン見学」 

講演と演奏:伊藤 繁(武蔵野大学教授)第1回ワークショップから会場としている武蔵野大学には、ドイツのボッシュ社が製作したパイプオルガンが設置されています。会場を「グリーンホール」から「雪頂講堂」に移動し講演を行いました。楽器の説明、演奏の合間に今回のテーマ「ヴィブラート」にそって、トレモロ効果やビブラート効果などさまざまな音色も披露していただきました。最後に参加者が直接オルガンに触れる機会をいただき、パイプが収まっている箱の内部や、発音しているパイプを間近で見たり、弾いたりと充実した時間を過ごすことができました。

 

「音感」 

音育の基礎ともいえる「音感」トレーニングを参加者全員がピアノの周りに集まって実習。純正調の響きをピアノの開放弦による共振で体感。「ハモル」とはどういうことかを実感しました。また、第1回目から続けている分散唱・分離唱、和音唱をトレーニングしました。

 

「カノン」

第5回目の課題は、用意されたカノンの和声進行、リズムに従って作詞、作曲するというもの。全員の課題発表の結果、今回はすべての作品が優れており、全員が最終発表で指導・指揮・演奏することとなりました。

発表終了後、各自が作曲したメロディーを一斉に歌うという今までに体験したことのないような演奏を行い、課題の和声が一致しているため、大きなハモリの渦となり、思わず感動!!

 

「指揮法」

第1回から一貫した実習として、カノンに作詞しそれを参加者同士が指導し合うことで指揮の原則(考え方)を学んできました。第4回で指揮の図形について学びましたが、今回は指揮棒を手に指揮法の基礎となる叩きと加速減速の動きを実習しました。

 

「終了曲演奏・録音」

第1回から参加者全員による終了曲演奏と録音を行ってきました。今回の課題曲は、バッハの『ロ短調ミサ』から終曲のフーガ "Dona nobis pacem"。単独では短い曲ですが、声楽的に高い技術が求められる作品で、今回だけでは完成・録音にいたらず、次回の再挑戦となりました。

 

■会長メッセージ

第5回ワークショップにご参加のみなさまへ

 花冷え気味ではありましたが、晴天の下充実の2日間を熱心に受講されるお姿に頭が下がりました。

 今回は音感・ボリフォニーの2本柱に加えて「ヴィブラート研究」および武蔵野大学の「オルガン見学」を致しましたので内容たっぷりでお疲れの事と思います。けれどもヴィブラートを懇切に説明してくださった東京カンマーコレーゲンの4人のプレーヤー、オルガンを演奏付きで丁寧にレクチャーして下さった伊藤繁先生のお力を頂いて時間の過ぎるのが速かったこと……とてもいい勉強になりました。

 2日目のカノン創作も段々慣れて今回は傑作ぞろいになりました。全曲をCDに収めるよう計画しています。

 教育音楽学会もいよいよ佳境。第6回目は8月末です。例のバッハをさらいながら楽しみにお待ちください。

会長 岡本 仁